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コラム

- 第3章 - 第1回 フレッチャ-の噛み方主義
19世紀の中頃に生まれた米国の商人で、フレッチャ-という人物がいました。この人はかなりの大食漢で美食家でした。欲望のままに美食を続けた結果、40歳の頃には身長168センチで体重は88キロ余りで、その後も体重は増え続け100キロに到達する寸前になり、そして体力・気力は衰え白髪だらけになり老人のようになってしまったのです。生命保険に入ることも断られたフレッチャ-さんは、この状況を打開するためにそれから一切の仕事を放棄し、様々な療養・治療を受けるために米国中を回ったのですが、医師の指示通りにやっても一向に健康は良くならないのです。ある時ふとしたきっかけで、ある家族の楽しげな食事風景を見る機会に出くわしひらめきました。ここから彼に大きな変化が出てきたのです。

彼は食べ物の選び方・摂り方・食べ方を、今までの医者が言うことの反対に自分の腹の要求に任せることにしたのです。先ず、
腹がペコペコになるまでは食べないこと。
欲しいものを食べること。
口に入れたものはドロドロになるまで、他のことは考えずに、その食べ物のことに精神を集中して噛むこと。

にしたのです。この新しい方法を続けている間に、彼の体調はぐんぐん良くなっていったのです。4ヶ月目には23キロ減って97キロから74キロになり、 150センチもあったウエストが94センチになって、しかも不思議なことに体力が出てきたのです。20歳若返った気持ちで仕事ができるようになったのです。食事は30~35分で噛み方は2,500回くらい。それでいて日に一食で間に合うようになったのです。水を飲むにもほんの少しずつ口に入れて体温ほど温めてから飲む。5ヶ月目には約71キロ、最後には58キロになった。実行前から見ると約39キロの減少。噛み方はネギ一切れを700回噛む徹底ぶりだったそうです。

彼は普通の人の1/3程度の食事量で十分になり、しかも自分ながら呆れるほどの体力を得ることができたのです。ある時彼は自分よりも20歳も若い友人である自転車旅行家と一緒に、長距離の自転車旅行に出たのですが、若い友人は1日で170キロを走行したところでケイレンを起こしてリタイアしたのに、フレッチャ-は休憩時間を含めて1日に18時間、304キロを走ったのです。しかも翌朝も日の出に起きて、午前中に80キロを簡単に走ってしまうほど、短時間で体力が回復するのです。 このような食べ方・噛み方を変えただけでフレッチャ-の健康に生じてきた現象について、アメリカの医学界は大きな興味を抱き始め、そして1903年フレッチャ-は54歳の時にアメリカニュ-ヘブンのエ-ル大学生理学教授チッテンデンの研究のために彼の実験台にのぼることにしたのです。